各界から説明責任を訴える声が相次ぎそうな突拍子もないタイトルなので、
ここで責任を果たそうと思います
今年の8月9日
その日、僕は出張から帰った足で映画館へ行っていました
目的は当日公開となった
「劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:」
前編からの期待を上回る完成度、未発表の新曲2曲にホクホクしながら(何故か徒歩で)帰路に着きました
新曲リピートしてぇ〜!と結束バンドの曲を聴きながら歩いていると、
唐突に友人からライン通話が
『劇場総集編で使われなかった場面だけでもう一本総集編作ろうぜ』
余韻台無しだよ范増
切っちゃおうかな、電話
でもまあ彼は僕の友人tier殿堂入りマンなので、
何か面白い話をしてくれるだろうと期待してそのまま通話を続けることにしました
他愛もないことを話しながら深夜の街を歩いていると、今度は動画が送られてきました
通信量が心配だからまだ見ないよ、と伝えると、
彼は動画の以下のようなあらすじを話してくれました
この動画の投稿主はバーチャルいいゲーマー(eじゃないよ)を名乗っており、バズるために苦心されているようでした
そんな中、彼は「自分には怒りが足りないのだ」という答えに辿り着きます
「生かしておけぬ……!」
それは殺意じゃないかな
その表情は徐々に険しくなり、ついには鬼の形相へと変貌します
そして、その首は突如として飛び上がり、
マ◯オ3の太陽のような表情の首がこちらに迫ってくる……というところで動画は終了するらしいです
うわあ
まいったなあ
わかんないなあ
怖いなあ
うわあ
心浮き立つぼざろの余韻は、
夜陰の中へと消えていきました
サイケデリックな話を流し込まれて動揺した僕は、「耳嚢に載ってる怪談かな?」という感想を絞り出したのち、
再び雑談へと戻るのでした
帰宅後
やばかったなあれ
粗筋にしたって粗過ぎだろ
きっと端折ってるに違いない
そう思って動画を見てみることにしました
───
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まいったなぁ……
そのまんまだった…………
こわいよぉ……と思う反面、
こんな鬼才がいるのかと感服する思いもありました
いやあ!この国の娯楽やサブカルは安泰ですね!
民草に天才たちが紛れているんですから!
https://youtu.be/t7PeJF9V_Zg?si=5zRLqmRXHAfUhz1m
だから
ほら
見ようね
さて、長い序文でしたが、
ここからが本題
この動画にインスピレーションを受けたので、
拙くはありますが怪談を書いてみました
もちろん全部フィクションです
ではお目汚し失礼します
改めまして
首鬼
江戸時代中期、享保の世のことである。
ある日の夜、御用人の弥右衛門は仕事終わりに九段の飲み屋で酒盛りをしていた。
酒盛りを始めて半刻ほど経った頃、弥右衛門は隣で酒盛りをしていた男の様子がおかしいことに気づいた。
頻繁に酒を煽りながら、何かをぶつぶつと呟いている。
「おい、そんなに飲んでは身体に障るぞ」
無視を決め込むつもりだったが流石に心配が勝ってしまい、弥右衛門は嗜めるような口調で男に声を掛けたが、それでもなお男の酒を飲む手は止まらなかった。
「何が悩みでもあるのか」
弥右衛門が問いかけると、男は微かに首肯した。
「金か」
首を振る
「女か」
首を振る
「仕事か」
男は頷くとともに、ダン、と猪口を持った手を机に叩きつけた。
「何の仕事をしているのだ」
「……役者だ……」
「何を悩んでいる」
「演じるだけでは大成できぬ……
俺には足らぬ……足らぬ……」
「何が足りぬのだ」
「怒りが足らぬ……」
一瞬鬼のような形相を浮かべたのち、役者は俯いたままぴくりとも動かなくなってしまった。
役者のただならぬ様子を見て気味悪さを感じていたところ、後ろから声を掛けてくる者があった。
声の主は麹町で同じく御用人をしている与助である。
「見知った後ろ姿だと思ったが、やはり弥右衛門か。お前に紹介したい仕事がある。どうだ、俺の席で一緒に飲まないか」
この場を離れられるなら願ったり叶ったりなので、弥右衛門は二つ返事で与助について行った。
与助と飲み直し始めてさらに半刻ほど経った頃、元いた席のあたりが俄かに騒がしくなり、
人だかりができていた。
ややあって悲鳴のような声が上がった。
「人が死んでいるぞ!」
様子を見に行くと、そこには土気色になった役者の姿があった。
その後は遺体が運び出されたり、店に役人が来たりと酒盛りどころではなくなってしまい、騒ぎが落ち着いた頃には丑三つ時になりつつあった。
与助に約束を取り付けて後日改めて飲み直すこととなった。
その帰り道、人気のなくなった大路を歩いていると、背後から人の声がした。
怪訝に思いながら振り返ると、遠くで人影のようなものがゆらゆらと揺れているのが目に入った。
正体を見てやろうと目を凝らしたその時、
人影は突然ぴたりと止まり、何かを喚きながら猛然と弥右衛門のほうに接近してきた。
一瞬月明かりに照らされたそれは人影ではなく、
先刻死体置き場に運ばれていった役者の生首だった。
「足りぬ 足りぬ 足りぬ」
鬼気迫る表情を見て飛び上がった弥右衛門は、一目散に逃げ出した。しかし、逃げども逃げども首は足りぬと喚きながら追いかけてくる。
無我夢中で走っていたところ、弥右衛門はいつのまにか墓地に入り込んでしまっていたようだった。肩で息をしながらあたりを見回すと、正面に寺の本堂が見えた。
遠くからは尚も声が聞こえていたため、弥右衛門は大慌てで寺の本堂に逃げ込み、須弥壇の裏に隠れた。
膝を抱えてがたがたと震えていると、とうとう首が本堂の中に入り込んできた。
「足りぬ 足りぬ」
首は喚きながら本堂の中を飛び回っていたが、須弥壇に近づいたあたりで突然声が止んだ。
「おお……これならば……」
その言葉を最後に、本堂から首の気配は消えた。
恐る恐る須弥壇の裏から本堂を見回してみると、そこに首の姿はなかった。
ふと須弥壇に目を遣ると、仏像の前に顔ほどの大きさの鏡が置かれていた。
首を傾げていたところ、騒ぎを聞きつけた寺の住職がやってきたので、弥右衛門は事の顛末を打ち明けた。
話を聞き終えたのち、住職は次の様に語った。
「役者は大成することに拘るあまり役に飲まれ、鬼に取り憑かれてしまったのだ。首が消えたのは、鏡に映った己の鬼気迫る顔を見て、役に相応しい表現ができたことに満足したからであろう」
翌日、死体置き場に安置されていた役者の遺体の首が無くなっていると騒ぎが起きた。
しばらくの間は首の捜索が行われたが、首が見つかることはついぞなかったという。
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いかがでしたでしょうか
記録されていないだけで、
こんな出来事がどこかで起きていたかもしれませんね
そんなわきゃないか
トンチキすぎるもんな
あらまあ!
なんと3000字に迫りそうです
語る制作秘話もないので、
今回はここでおしまいです
おや?
音楽の話はどうしたという幻聴が聞こえますねえ
中途半端なのもあれなので、
次回続きを志そうと思います
少しだけ触れると、
今回の冒頭でちょびっと名前の出たバンドこそが、
今の自分を支えてくれています
はらそうぎゃてい
ぼーじーそわかー